装備の不備(地図を持たない):宮崎県時雨岳

登山に2万5千分の1地形図(入山者の多いポピュラーな低山なら、5万分の1地図も許容範囲)とコンパスを持っていくのは常識中の常識。何かの拍子にルートをはずし道に迷っても、現在地確認ができれば、恐れることはありません。また、登山をするに際しては、国土地理院の2万5千分の1地形図を読みこなせるだけの、『読図力』は必須の能力です。

この項では、ヒマラヤ遠征や冬の北アルプス登山など40年以上の経験を持つ山のベテランが、駐車場からたった1時間で山頂の山に地図を持たずに入山してしまい、道に迷った末に5日目に救助された例を見てみましょう。


場所:宮崎県時雨岳
時期:5月中旬
行動概要:

5月11日 (雨のち曇り)
単独で入山。写真撮影に熱中するうちに方向を失い、ビバーク。
5月12日 (曇り)
道を探し行動するも、発見できず。家族が騒ぎ出し、身内での捜索開始。
5月13日 (曇りのち夜半から雨)
家族から警察に正式に捜索願が出される。遭難者本人は、大きな倒木の隙間に葉っぱを敷き詰め天候の回復を待つ。捜索隊は手がかりを発見できず。
5月14日 (快晴。山中は霧のち晴)
捜索するも手がかりなし。遭難者本人は、前日と同じ場所で、大きな倒木の隙間に葉っぱを敷き詰め天候の回復を待つ。 午後天候が回復したので、行動開始。沢で行き詰まり、そこでビバーク。
5月15日 (晴れ)
身内の捜索で車を発見、遭難現場がはじめて特定される。同時に救助隊が捜索を開始。

遭難者は行動(登高)を開始し、10時間の歩行の後林道に自力で脱出。午後6時、車が発見されたところからは40km離れた地点で森林組合の人に発見され、救助される。


詳しい遭難報告はこちら
http://www.gsoq97.com/miyasanngaku.html

遭難に至った根本的な原因は、やはり地形図とコンパスを持っていなかったことでしょう。登山の大ベテランの方ですから、この2つがあれば、この状況で遭難することはまず考えられません。


この遭難から得られる教訓

たとえ低山であっても、何かの拍子にコースを見失い、道に迷ってしまうことはありえます。そんな時生死を分けるのが地形図とコンパス、そして読図技術です。

しかし遭難という結果になってしまいましたが、さすが山のベテランだけあって、かなり冷静な判断をしています。

沢からはザアザアと水は大量に流れているのですが、どの沢も急坂で下りると尾根に戻る体力がない。それなら体力を温存する方を選んだほうが生き延びられると判断した

時間はまだ3時、後4時間はあるいてもよいが、そのとき雨宿りする銘木がなかったら、其れは死を意味する。

屋根のないところで、雨に打たれたらお仕舞、無駄な体力の浪費は凍死に繋がる。先人の教訓を胸にたたんで、慌てることがなかったのがよかったと思います。

など、行動ができなくなった場合の大原則、『その場でビバークも覚悟の上で、天候の回復を待つ。パニックになって動き回り、体力を消耗させないこと』を実践しています。


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