綿のウェアはナゼご法度?


登山で綿のウェアは危険です。

もちろん、登山専用ウェアを着なければ遭難してしまう、という意味ではありません。好天時の山登りなら、綿だろうと裸だろうと(笑)、危険など微塵も感じることなく山行は終わることでしょう。

ではなぜ危険かといえば、「何かあったとき」が問題だからです。夏山でも低体温症で遭難死する例は少なくありませんが、体温を奪う最大の要因は「濡れ」と「風」。雨で全身ずぶ濡れになり、そこへ吹きさらしの稜線の強風に吹かれ体温を奪われ、やがて行動不能になり・・・気象遭難の典型例です。

綿は繊維自体が水を多量に含み、しかも保水力が高く、濡れると乾きが遅いという特徴があります。登山用のインナーウェアはほぼ100%特殊素材の化繊、繊維の含水量がゼロで濡れてもすぐに乾くので、奪われる体温が最小限ですみます。

気化熱+強風による冷えは想像を絶するものがあります。20年以上前の私の大学ワンゲルでの初合宿でしたが、注文したウェアが間に合わず、1年生だった私たちは普段着の綿Tシャツに綿Yシャツを重ね着し、5月後半の八ヶ岳へ向かいました。そして雨に降られ、透湿性ゼロのハイパロン製レインウェアで全身ずぶ濡れとなったのですが、歯の根が合わないほどの寒さ・震えに襲われてました。

当時の先輩に聞くと、『お前は唇が真っ青になっていて、正直これはヤバイと思った』とのこと。底なしの体力があった当時の若さのお陰で幸運にも無事に(?)下山でき、今では酒の肴にもなっている話ですが、当時は登山初心者、冗談抜きに死ぬかと思いました。

ことさらに登山時のウェア、特に肌に直接触れるアンダーウェアは重要なもの。登山での動きやすさや耐久性が考慮された専用ウェアが絶対にお勧めです。

現在私が愛用しているのは、ファイントレック社の5レイヤリング・シリーズ。特に耐水撥水インナーは、ずぶ濡れになる沢登りで絶大な効果を実感しています。同社の「異次元ストレッチ」を謳うレインウエアも試してみましたが、蒸れ対策も万全で、かつ実に動きやすくて軽快・快適、日本の繊維産業の実力を感じます。少々お高いのが欠点ですが、いざというときには生命に関わることなので、金で買える安全なら積極的に買いたいもの。こういうところに使うお金は、決して無駄金にはなりません。

好日山荘などで取り扱っていますので、ご参考に。

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