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Em-Shelter I/ エム・シェルター

ツエルト泊に関しては、自分で言うのもなんですが、私はかなり経験値が高いです。若かりし日々、アルパインクライミングをしていた頃は厳冬期でも普通に半雪洞のツエルト泊をしていましたし、1人で北米クライミングツアーをしたときは3ヶ月間ツエルト泊まりでした。テントを買う金もモーテルに泊まる金も無かった・・・という裏事情はありますが(笑)。

よって、どんなに天候が荒れようと、ツエルトでの避難体勢を整えるのはお手の物。「ザックを地面に敷いて座る→ザックの雨蓋からツエルトをかぶりながら引き出す→生地を足元にたくし込む→傘をさす」の一連の動作に要する時間は1分ほどです。素早くツエルトを使う工夫や小技等、ツエルトの薀蓄を語らせたら長くなるので^^、それはまた別の機会に。

で、あなたのツェルト、「持っているだけで使ったことのないアイテム」になっていませんか?ツエルトは「簡易テント」として「張ろう」とするのが間違いの元、最初から「宿泊用ではない(※)」「かぶって使うもの」の割りきっておけば、利用の幅がぐっと広がります。

特にお勧めしたいのが、悪天時の休憩。雨風に打たれる場面では、雨具を着たまま行動食を口にする・・・ぐらいがせいぜいです。しかしツエルトを使えばコンロを焚いて暖かい飲み物や食べ物を摂取し、冷えきった体を温めたりも可能(引火や酸欠には十分注意が必要)。薄着で寒い場合はツエルトの中でウェアを着足すこともできます。

ただやはり、慣れていないと素早く効果的にツエルトを使えないのも事実です。だから「家でも山でも遊び感覚で練習」を薦めていたのですが・・・。

「まだツエルトを使ったことがない人」にお勧めしたいのが、こちら、『Em-Shelter I/ エム・シェルター』。

↓(メーカーサイトから)

初心者やご年配の方にとっては、逆にその「使い道の多さが仇」となって、身を守る準備が遅れ、重大な事態を招きかねません。緊急時に身を守る一番素早く確実な「かぶって座る」をいかに追求するかと言うことです。シンプルで誰でも使いやすいように、他の使い道はすべて切り捨てて「かぶって座る」のみに「特化」しました。このことにより、初心者やご年配の方でも「テクニックなし」に素早く身を守る準備ができるようになりました。


シンプル・イズ・ベスト、重さもわずか300g。ちょっとお高くはありますが、「非常時のお守り」のみならず、「雨の時、寒い時の休憩」にもどんどん積極的に使ってほしいですね。

私自身は、使いこなす自信もあるし、応用がきくのでツエルトを愛用していますが、これからツエルトを買おうと思っている方には、『Em-Shelter I/ エム・シェルター』をお勧めします。

詳しい仕様は公式サイトで:緊急だからこそシンプルな方がいい・・・That's it! Em-Shelter!!


(※)ツェルトを軽量化のための簡易テントとして使うのは、あまり意味がありません。もともと快適さについては全く考慮されていませんので、その目的であればシェルターが断然お勧めです。

大切なことは「こまめな現在地確認」と・・・

昨年の警察庁の発表によると、道迷いが遭難原因のNo.1(滑落の2倍以上)となっているそうです。

道に迷っても、現在地が把握出来れば恐れることはありません。そしてそのために重要なのが、「こまめな現在地確認と記録」です。

私は山歩きでは、ウエストポーチに地図・コンパス・メモ用具を入れて、こまめに行動記録を取っています。小ピークや分岐点などを通過するときには必ず時間をメモ、1時間に1回の小休止の時は必ず地形図を開き現在地を確認。自分がどこをどのくらいのペースで歩いているのか、常に把握しています。

そうすれば「あれ?ルートを間違えたか」と思ったときにも、すぐに現在地を地形図から確認できます。

『さっき一本とったときはココにいた、あれから普段のペースで30分だから距離的にはこのくらい、今の周囲の地形がこうなっているということは、こっちのほうに来てしまったのか。いかん、戻らないと』。このように現在地確認ができれば、道迷い遭難の確率は格段に低くなります。

心理学の本を読んでいる時に「なるほど!」と思ったのですが、人が間違いを犯しつつあるときは、「自分の失敗を認めない」という心理が働くそうです。おかしいと思いつつも進んでしまうのも、こういう人間の持つプリミティブな(?)心理が働いてのことなのでしょう。

こまめに現在地確認をする、違和感を感じたらすぐに2万5千分の1地形図を広げ再び現在地確認をする、しからばそうそう道迷いに陥ることはないでしょう。濃霧に巻かれるなどで現在地がわからなくなる場合もありえますが、GPSが活躍するのはこういう時でしょうね。GPSは地図代わりに使うものではなく、「いざという時(=現在地を把握できなくなってしまったとき)に自分が今いる位置を把握するための道具」という意識で携行するのがいいかと思います。


雨の山

自分も中年と言われる年代にさしかかり、登山の嗜好がかなり変わってきました。その最たるものが、樹林帯歩きや雨の日の山も好きになったということです。

20代の頃は樹林帯歩きなど岩場へのアプローチでしかなく、雨も苦痛以外の何者でもありませんでしたが、今では濡れた森の匂い・雨の音・独特の静けさに包まれていると、心の底から安らぎを感じます。もちろん土砂降りの悪天は今でもご免こうむりたいですが(笑)。

交通事故のリハビリに、日帰りでマイナー低山に出かけた日の感動は忘れられません。その日は雨が降っていたので最初から頂上を目指す気もなく、気の向くまま何度も大休止を取りつつ一人で歩きました。そして、そこで初めて雨の山の魅力を知りました。

もちろん、学生時代と違い、高性能の防水透湿性雨具やアンダーウェアなどの装備を揃えることができているのも大きいですが、雨の山を心から楽しめる自分が今います。

ヒザへの負担ということを考えれば、歩き主体の登山よりクライミングのほうが負担が少ないのですが、やはり年をとったということでしょう(笑)、岩場をガツガツ攀じるより、のんびりと樹林帯を歩くほうに魅力を感じている昨今です。


軽量化についての考え方

軽量化・・・今はかなり気を使い荷物はテント泊2泊3日でも14キロ以内に収めるよう工夫しています。これくらいの重さなら、衰えた今の私でもなんとか最大8時間ぐらいは歩けますので。

底なしに体力のあった学生時代は、荷物を軽くすることなど全く考えたことがありませんでした。大学ワンゲルは『重いザックを担げる奴がエライ』の世界でしたからむしろ重量化思想があり(笑)、今となっては懐かしい話ですが、合宿にウクレレギターやメンバーに振る舞うための缶ビール1ダースを持って行ったりしたものです。

大学3年の秋に社会人山岳会にも入会し、次第に厳しい登攀をするようになったことで、軽量化についての技術や工夫を学び始めました。交通事故でヒザを痛めてからは荷物の重さに非常に気を使っていますが、このころの経験が大きく生きています。

軽量化の基本は、「あれば便利なものは無くても大丈夫なもの」であり、「安全に関わる物は絶対に削らない」ということです。「自分の技術・体力と照らし合わせ、この山行ならこれは無くても大丈夫、ここまで削っても最悪の事態に対処できる」という点を見い出すのが、登山における軽量化と思います。

私の場合寒さには強いので、厳冬期の山でもシュラフは最高級ダウンの一番羽毛量が少ないモデルですし、夏場ならシュラフカバーだけということもあります。また最近の登山装備は非常に軽いものが売りだされているので、それも積極的に導入するようにしています。値段が重さと反比例するのが残念ですが(笑)。

しかし軽量化に凝り固まり山の楽しみも削ってしまうのは、これまた本末転倒。例えば私ですと、コーヒをいれるパーコレーターは絶対に外せないアイテムです。未明の薄闇のテントの中、ガスストーブの上でポコポコと音を立てるパーコレーター、そして朝焼けに輝く山を眺めながら飲む一杯の香り高いコーヒー・・・この至福の時間なしに、なんのための登山でしょう(私にとっては、ですよ)。

人によって「絶対に外せないアイテム」はカメラであったり、絵を描く道具であったり、または安眠のための道具かもしれません。全ては自分の技術と体力を見極め(ここが重要)、軽量化と楽しみのバランスをとることが重要かと思います。


<山岳遭難>死亡・不明の6割超が60歳以上 警察庁が統計

本日(2012年6月21日)の毎日新聞の記事より、以下を引用します。

(引用開始)
07~11年の5年間に山で死亡または行方不明になった遭難者のうち、6割超が60歳以上であることが警察庁の調べでわかった。今年5月の大型連休中には、長野県の北アルプスで60~70代の6人のパーティーが死亡する遭難事故も発生。夏の登山シーズンを前に、同庁が注意を呼びかけている。

 警察庁によると、07~11年の山岳遭難者は1万426人(60歳以上は5233人)。このうち死者・行方不明者は1426人で、60歳以上は918人(64.3%)だった。

 11年は40歳以上の中高年が遭難する原因は「道迷い」が39%と最も多く、滑落18%▽転倒16%▽病気7%▽疲労5%▽転落4%▽野生動物の襲撃2%--など。入山目的のほとんどは登山と山菜・キノコ採りという。

 中高年を中心に遭難者は増加傾向にあり、警察庁幹部は「初心者に限らず、ベテランが加齢による体力や判断力の衰えから遭難してしまうケースも少なくない」と指摘。自分に合ったコースや日程を設定すべきだとしている。
(引用終わり)


「道迷い」が39%と最も多い、というのは看過できないものがあります。滑落や転倒の2倍以上ですか・・・。2万5千分の1地形図を読みこなす「読図技術」やルートファインディングの技術などは、登山者たるもの最低限身につけなければいけないものだと思います。どうも、「自分の身は自分で守る」という意識が薄いのではと思わずにはいられません。

読図講習会や救急法講習会などに参加するとか、せめて地図読みに関する解説書を読んでみるぐらいのことはしないと。

(一部の先鋭的な登山家は除きますが)登山はレジャーですから、心ゆくまで山を堪能して楽しむべきです。しかし、自然の中へ分け入るぶん、行楽地へ行くよりはるかに潜在的な危険度は高くなります。そこは十分に自覚して準備をするようにしないといけません。たとえツアー登山であってもです。



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