最新・中高年登山事故事例:カテゴリー
片山右京さんの富士山遭難
この遭難について、野口健さんが自身のブログで言及していますが、私の考えも基本的に同じです。
冬富士は夏と全く様相が違い、非常に気象条件の厳しい山になります。私も経験がありますが、体が浮き上がるほどの烈風、極低温。足元もカリカリのアイスバーン状態になり、技術的には(ヒマラヤ登山を目指す人にとっては)それほど高度ではありませんが、僅かなミスが死に直結する山に一変します。
しかし片山さんは7大陸最高峰登頂を目指し、南極のビンソンマッシフ峰への遠征を控えていたわけで、そのトレーニングとして冬の富士山に登るのは、理に適った行動です。もし南極のブリサード対策に、寒波が襲来中で天候が荒れることを承知で敢えて行ったのなら、それは誰にも非はない遭難、ということです。
強い寒波が来て天候が荒れることをわかっていて登山を行ったか・・・そこがはっきりしていないので、最終的な判断はできないのですが・・・。
寝ているときにテントごと吹き飛ばされたわけですから、遭難の原因は技術が未熟だったわけでも、装備がしっかりしていなかったわけでもありません。登山届けを出していなかった点はいただけませんが、よくある無謀登山とは違います。
片山さんが仲間をおいて下山した事についていろいろ言う人がいるようですが、あの状況では当然の行動、ベストの選択だったと思います。
滑落の長男を助けようと、25歳父親転落死
長男は約10メートル滑落し、顔に擦り傷を負ったが、自力で斜面をはい上がり、別の登山者に救助された。
伊勢原署の発表によると、現場は標高約700メートルの中腹付近で、Mさんは長男と妻(26)、次男(4)の4人で午後3時頃から下山し、Mさんが山側、長男はがけ側を手をつないで歩いていたという。
(2009年10月5日・読売新聞の記事より引用・一部改変)
家族での楽しい登山が一転、なんとも痛ましい事故となってしまいました。
ニュースソースからでは大山のどの登山ルートを通っていたのかがわかりませんが、4歳の子供でも歩ける道となると、ケーブルカーで阿夫利神社まで行き、見晴台を回って大山山頂を目指すコースかと思います。大山はまさに私の地元ですが、丹沢山系の大山は非常に道も整備されているので、どこで滑落してしまったのか、正直なところ見当がつきません。
とりあえずその点はおいておいて、遭難事故(登山に限りませんが・・・)が発生した際に第一に考えることは、「二重遭難を防ぐ」ということです。
パーティーのメンバーが滑落してしまった場合、リーダーがまず第一に考えることは、状況を把握しパーティー全体の安全を確保すること。パーティーを安全な場所に移動させた上で、自力救助が可能なら、救助者の安全を最優先事項として救助活動を行います。
滑落したお子さんも自力で斜面を這い上がれたとのことなので、その心得があったら・・・と残念です。
溺れた子供を助けようと海に飛び込み、逆に自分が溺れてしまう・・・。そのような事故はよくありますが、二重事故を防ぐ冷静さが、事故発生時には最も重要なことです。
遭難10日、雨水で耐える...丹沢で男性救出
(2009年9月)15日午後5時10分頃、神奈川県山北町の丹沢山系の玄倉(くろくら)川女郎小屋沢で、会社員男性(58)が倒れているのを、捜索していた県警松田署山岳救助隊らが見つけた。同隊員らが夜通し背負って下山し、16日昼前、病院に運んだが、右足骨折などの重傷。
松田署の発表によると、6日朝、丹沢山系の林道から女郎小屋沢を登る途中で滑落し、約5メートル下の岩場に転落、動けなくなった。食料は1日分しかなく、7日からは雨水を飲んで救助までの10日間を耐えた。
会社員男性は一人暮らし。出社しないため会社の同僚が心配し、富山県に住む兄に連絡。兄が12日に高坂さん宅に入り、丹沢山系に出かけていることを確認し、捜索願を出していた。
(9月16日付・読売新聞の記事より引用・一部改変)
ニュースソースだけからでは詳しい装備などがわかりませんが、まずは10日間のビバークを耐え抜き救出されたことは、何よりです。
事故のあった女郎小屋沢は入山者の多い表丹沢ではなく、西丹沢のあまり人気(ひとけ)のない沢です。技術的にも決してやさしい沢ではなく、直登も高巻きも悪い所が多いので、こういうところに入山届けを出さずに単独で入山というのは、やはりちょっと無謀だったと思います。
女郎小屋沢は日帰りで行ける沢なので、もし登山届けが出されていれば10日間ものビバークを強いられることはなかったはずです。
これだけの期間のビバークを耐えられたのですから、ビバーク装備は持っていたのではと思われますが、記事から察するに非常食は持っていなかったようです。
人間である以上、滑落などのミスを100%防ぐことはできません(もちろん、「100%防ごう」という意識は大切です)。ですから常に最悪の事態を想定し登山の準備を進めるのは、非常に大切なことです。
救助隊員の方が夜通し担いで下山されたとのことですが、多分衰弱が進んでいて危険と判断されたのではと思います。普通なら明るくなるのを待って救助作業をするでしょうから。
それだけ隊員の方々に二次遭難のリスクを背負わせてしまったわけで、「リスク管理は自分だけの問題ではない」、という認識を我々登山者は持つべきでしょう。
岐阜県警防災ヘリ、奥穂高岳で墜落
2009年9月11日、北アルプス奥穂高岳へ登山者の救助に向かった岐阜県警防災ヘリが墜落、操縦士・整備士・防災航空センター副隊長の3名が亡くなられるという痛ましい事故が発生しました。
長野県警山岳遭難救助隊ドキュメントでも紹介されていましたが、救助活動は二次遭難の危険性を常にはらむ、危険と隣り合わせの活動。亡くなられた3人の方のご冥福を、心よりお祈りいたします。
新潟県佐渡市の妙見山で男性死亡
市や佐渡西署によると、佐々木さんは25日午前10時すぎ、県内外の登山仲間17人と登山を開始。山頂で昼食を取り、下山を始めて15分後に姿が見えなくなった。佐々木さんは登山経験が少なく、足が不自由だったという。当時、周囲は濃霧で視界が悪く、捜索も難航。県は26日、自衛隊にも災害派遣を要請していた。
発見場所が標高約800メートルで、同署は佐々木さんが山頂から滑落したのではないかとみて調べている。
産経ニュースより引用(http://sankei.jp.msn.com/region/chubu/niigata/080528/ngt0805280234001-n1.htm)
現場の妙見山は、ハイキングに毛の生えた程度の難易度の山と思われます(じゃらんホームページ)。当日の悪天候を差し引いても、決して難易度の高い山とは言えません。別のソースのニュースでは、登山開始から約1時間半で山頂に達しています。
そして下山開始が午前11時半過ぎで、警察への通報が午後2時すぎ。下山を始めて15分後に行方不明になったとのことですので、遭難を察知してから通報まで約2時間半かかっていることになります。
パーティーで山を登る場合は、リーダーが一番後ろで全体の安全に目を光らせ、サブリーダークラスが先頭でルートファインディング、技術・体力的に弱い人(特にこの山行では、遭難者は経験が浅く足が不自由だったとのこと)をセカンドにたて、全体で行動するのが基本です。
この基本が守られていればこのような事故は起こるはずはなく、実質「県内外の登山仲間」は「登山パーティー」ではなかったと思われます。
パーティーの装備や行動詳細が発表されていないので断定はできませんが、「パーティーをばらけさせない」という登山の原則を守っていれば起こりえなかった事故と思われるだけに、残念です。
