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フェイスブックで男性救助 仙台・大東岳

12日午前8時20分ごろ、仙台市太白区の大東岳(標高1366メートル)を登山中の男性が滑落し動けずにいるとの通報が宮城県警にあり、市消防ヘリが男性を同10時45分ごろ発見、救助した。男性が携帯電話で交流サイトのフェイスブック(FB)に位置情報などを書き込み、それを読んだ東京都在住の知人男性が通報した。県警仙台南署は「FBがきっかけの救助要請は珍しい。救助につながり良かった」と話している。
(毎日新聞 2014年4月12日付記事より引用)

登山中に滑落、行動不能になった登山者が、SNSのFacebookに投稿することで救助に繋がったそうです。

電波状況が不安定で電話できなかったためFBに投稿したとのことですが、思えば東関東大震災の際、電話での通信が困難になる中で通信手段として活躍したのが、同じソーシャルメディアのTwitter でした。技術的な面で電波状況が悪くても通信しやすいそうですが、スマートフォンが普及した現在、非常時の通信手段の1つとしてSNSも有効な手の1つになったと言えそうです。

とはいえ、何事も習熟していないと非常時に活用することは出来ませんので、アカウントを持っていない方は、まずFacebookやTwitterのアカウントを取り、身近な山仲間などとの交流を始めてみたらいかがでしょう。使い方そのものは全く難しい物ではなく、何より無料ですので、新しいもの嫌いな方も(実は私もその一人でした・・・)ぜひ「物は試し」に使ってみてほしいと思います。


あめ玉7個と水で2週間 30歳生還 埼玉・両神山

27日午後3時5分ごろ、埼玉県小鹿野町の両神山(標高1723メートル)の七滝沢で、東京都大田区の会社員、多田純一さん(30)が座り込んでいるのを、捜索していた県警山岳救助隊が発見、同県秩父市の病院に搬送した。多田さんは14日朝「これから登ります」と家族にメールをしたのを最後に連絡がとれず、家族が15日未明に捜索願を出していた。

 同救助隊によると、多田さんは左足を骨折しているが、命に別条はない。持っていたあめ玉7個と沢の水を飲んでしのいでいたという。発見時には防寒用に薄手のジャンパーを着ていた。衰弱していたが隊員に「手を握ってほしい」と求め、隊員が応じると涙を流して喜んでいたという。

 多田さんは13日夜に家族に「秩父の百名山に登る」と言い残して自宅を出発。1人で入山したらしい。登山の経験は少なかったという。


(2010年8月28日 毎日新聞)


両神山の七滝沢コースは、今では地図で、実線でなく破線で書かれているコースです。鎖場が連続し難易度が高く、しかも入山者が非常に少ないので、「登山の経験が少ない」人が歩くコースではないですね。

事故の原因が滑落によるものか、道迷いの末の遭難なのか・・・この記事ではわかりかねますが、救助されたのは不幸中の幸い、何よりです。死亡遭難事故になっていた可能性も大きかったと思いますから。

何とか生還できた理由を考えてみると、

1.骨折して歩けなかったため、逆に体力が温存された

2.天候に恵まれた(雨の日があれば、どうなっていたか・・・)

3.沢の水を飲める場所だった

4.入山前にメールを送り、結果として初動体制が早まった

の4点が大きいと思います。このうちの1点でも欠けていれば、取り返しの付かない事態になっていた可能性が高かったでしょう。

ただ、『沢の水と2日で1個の飴玉』だけで2週間持ったのですから、このこと自体は我々登山者に貴重なデータを与えてくれる事例だと思います。『2~3日ぐらい何も食べなくても、水さえあれば死にはしない』ということですね。

バリエーションルートの厳しい登山を経験した人なら、『そんなの当たり前だろ』といった感じでしょうが、一般登山者の方には案外そうではありません。

食料が尽きそうだから悪天の中無理な下山を敢行し、結果として助からなかった・・・という事例がありますので。


埼玉県の防災ヘリ再開のめど立たず 隊員ら精神的ショックで

埼玉県秩父市の山中で7月25日に県防災ヘリコプター「あらかわ1」が墜落、県防災航空隊員ら5人が死亡した事故で、同僚隊員らが精神的なショックを受け、現在定期検査中のもう1機の防災ヘリ「あらかわ2」の運航再開のめどが立っていないことが10日、わかった。

 県が同日、さいたま市で開いた県内36消防本部の消防長らを集めた会議で明らかにされた。

 県によると、今月6日に総務省消防庁から派遣された医師と臨床心理士が、県防災航空隊員と防災ヘリの運航を委託されている本田航空の操縦士の約25人を対象にカウンセリングを実施。その結果、数人が重症と診断された。

 県ではこれまで防災ヘリ2機を所有していたが、墜落事故で「あらかわ1」を失い、現在は「あらかわ2」だけとなっている。だが、隊員らの精神的なショックが大きく、「あらかわ2」の検査が終了する16日以降の運航再開時期については見通しが立っていないという。

 この日の会議では、近く「山岳救助活動ガイドライン作成委員会」(仮称)を設置するほか、殉職者合同葬を9月2日にさいたま市内で開催することなども明らかにされた。


(2010年8月10日付 産経新聞より引用)


昨年の穂高での救助ヘリ墜落に続き、埼玉でも痛ましい二重遭難事故が起こってしまいました。

ニュースによれば、隊員の方々もショックを受けていらっしゃるとのこと。5名もの仲間の命を失ってしまったのですから、当然です。一日も早く心の傷が癒されることを祈るばかりです。

救助隊員の方々は見ず知らずの登山者のために、文字通り命を賭けて救助活動に当たられています。ご遺族の方は、『どうして趣味で遊びに来た登山者のために・・・・』という思いを少なからず持たれているはずです。

私たち登山を愛するものはすべからくその事実を胸に刻み、遭難事故を起こさないよう万全の備えを怠らないようにしましょう。


片山右京さんの富士山遭難

2009年12月18日、冬の富士山登山を行っていた、元F1レーサーの片山右京さんら3人が遭難しました。ニュースや新聞でも大々的に取り上げられたので、事故の経過については説明しませんが・・・。

この遭難について、野口健さんが自身のブログで言及していますが、私の考えも基本的に同じです。

冬富士は夏と全く様相が違い、非常に気象条件の厳しい山になります。私も経験がありますが、体が浮き上がるほどの烈風、極低温。足元もカリカリのアイスバーン状態になり、技術的には(ヒマラヤ登山を目指す人にとっては)それほど高度ではありませんが、僅かなミスが死に直結する山に一変します。

しかし片山さんは7大陸最高峰登頂を目指し、南極のビンソンマッシフ峰への遠征を控えていたわけで、そのトレーニングとして冬の富士山に登るのは、理に適った行動です。もし南極のブリサード対策に、寒波が襲来中で天候が荒れることを承知で敢えて行ったのなら、それは誰にも非はない遭難、ということです。

強い寒波が来て天候が荒れることをわかっていて登山を行ったか・・・そこがはっきりしていないので、最終的な判断はできないのですが・・・。

寝ているときにテントごと吹き飛ばされたわけですから、遭難の原因は技術が未熟だったわけでも、装備がしっかりしていなかったわけでもありません。登山届けを出していなかった点はいただけませんが、よくある無謀登山とは違います。

片山さんが仲間をおいて下山した事についていろいろ言う人がいるようですが、あの状況では当然の行動、ベストの選択だったと思います。


滑落の長男を助けようと、25歳父親転落死

(2009年10月)4日午後3時半頃、神奈川県伊勢原市の大山(1252メートル)で、下山中の同県相模原市、Mさん(25)が、登山道から滑落した小学1年の長男(6)を助けようとした際、誤って約60メートル下の沢に転落し、脳挫傷で死亡した。

長男は約10メートル滑落し、顔に擦り傷を負ったが、自力で斜面をはい上がり、別の登山者に救助された。

伊勢原署の発表によると、現場は標高約700メートルの中腹付近で、Mさんは長男と妻(26)、次男(4)の4人で午後3時頃から下山し、Mさんが山側、長男はがけ側を手をつないで歩いていたという。


(2009年10月5日・読売新聞の記事より引用・一部改変)


家族での楽しい登山が一転、なんとも痛ましい事故となってしまいました。

ニュースソースからでは大山のどの登山ルートを通っていたのかがわかりませんが、4歳の子供でも歩ける道となると、ケーブルカーで阿夫利神社まで行き、見晴台を回って大山山頂を目指すコースかと思います。大山はまさに私の地元ですが、丹沢山系の大山は非常に道も整備されているので、どこで滑落してしまったのか、正直なところ見当がつきません。

とりあえずその点はおいておいて、遭難事故(登山に限りませんが・・・)が発生した際に第一に考えることは、「二重遭難を防ぐ」ということです

パーティーのメンバーが滑落してしまった場合、リーダーがまず第一に考えることは、状況を把握しパーティー全体の安全を確保すること。パーティーを安全な場所に移動させた上で、自力救助が可能なら、救助者の安全を最優先事項として救助活動を行います。

滑落したお子さんも自力で斜面を這い上がれたとのことなので、その心得があったら・・・と残念です。

溺れた子供を助けようと海に飛び込み、逆に自分が溺れてしまう・・・。そのような事故はよくありますが、二重事故を防ぐ冷静さが、事故発生時には最も重要なことです。



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