たった一人の生還― 「たか号」漂流二十七日間の闘い

遭難という極限状況に冷静に対処するには、『実際の極限状況の体験』が何よりも大切です。レスキュー隊員や自衛隊の救難隊員などの遭難対応のプロフェッショナル達は、まさに死と隣り合わせの壮絶過酷な訓練を日々積んでいます。

むろん我々一般人が実際に自分を極限状況に追い込むのは難しいですが、死の淵から実際に生還された方の貴重な手記を読み、疑似体験を積むことはできます。

この手記は海難事故による漂流体験を綴ったものですが、まさに壮絶の一言。書中に救助直後と近況の筆者の写真がありますが、その全く別人と言ってよいほどの姿の違いが、いかに過酷な体験だったかを雄弁に物語っています。

忘れてしまいたいであろう地獄の体験を、こうして書物に残して下さったことには感謝しなければなりません。

山岳遭難についての本ではありませんが、山に登る人はぜひ一読をお勧めしたい一冊です。

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