山での『強さ』

登山の体力について、よく『彼は強いよ』などと表現しますが、下界での体力の強さと、山での体力の強さは必ずしも一致しません。たいていの場合は一致するのですが、なぜか例外もけっこうあるのです。

私の大学時代の話ですが、山でもの凄く強い先輩がいました。どんなにハードな行程でも、とにかくバテない。夏合宿などで40キロのキスリングを担いでいても、一人だけ涼しい顔をして飄々としているような人でした。

でもこの先輩、普段のトレーニングではからきしなのです。マラソンをしても、いつもビリ。『何であの人に山で負けるのだ??』と、私などいつも思っていたものです。

ところがこれと正反対の例がありまして、私がガイド活動をしていたころの話です。夏の遠足登山で北アルプス縦走する、とある中学校があるのですが、私もガイドとして生徒達を引率をしていました。

その中で、バテにバテて自力下山できなくなってしまった子がいたのですが、聞けばバスケットボール部のエースで、特に体力のあるはずの子でした。

結局横尾まで担いで下ろし、そこから車で上高地まで下山させたのですが、上高地に付く頃にはピンピン。プライドが傷ついたのでしょう、他の生徒を迎えたときは泣いていました。

他にも、下界での『スポーツの体力』と『登山の体力』が必ずしも結びつかない例はいくつも見ました。

どうしてなのかはわかりませんが、運動生理学的に筋肉の質とか、体が高度に順応しやすい体質かどうかなど、原因はいくつかあるのだと思います。

不思議なものです・・・。

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